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ワシの知らんことシリーズ 第一回 Roger.
いまから『ワシの知らんこと』シリーズというのを始めようかと思う。半世紀も生きておるとコワイものはもうほとんどありはせず、若ぇときは恥ずかしくて言えなかったことも、いまや堂々と言えるようになった。
さてこれは映画『大空港』の一部。
これはどうでもよくて、この『大空港』はなにしろ見たことがない。ところがこれのパロディ版と言われる「フライング・ハイ」という徹底的なアホ映画はテレビで見たことがある。これの印象は、あまりに阿呆で強烈だった。
なかでもとりわけ印象に残ったのが、コクピット内の会話。機長が管制塔に向かって
Roger!
と言うたびに横のコパイが返事をするのだ。なんで返事をするかというと、その名がRogerだからというだけだ。この手のギャグが延々と続く(当たり前だが、吹き替え見てるだけだとワケわからん)。
これを最初にみたのは、ワシはまだ十代だったのではないかと思うのだが、まぁあまりよく覚えておらん。そのときはなんとなく、Rogerというのは「了解」が基本的な意味で、つまりその「了解」という名の人間がいるということなのだろうと理解した。ような気がする。
実は正解を知ったのは、つい最近だ。
了解というのは元々は
Confirmed.
というような言い方をされていたらしい。その頭文字Cをとって Charlie と言ったりすることもあるというのを聞いたことがあるが、おれは無線で何度かその Charlieを使ったことがあるけれども、「おれはCharlieじゃない」という応えしかもらったことがない。Charlieはそうとう昔の言い方で、いまは橿原にしか残っていないらしい。
でRogerだが、これも実は成り立ちはCharlieと同じタグイらしいのだ。
というのも、電信通信が始まったとき、了解は、今でもそうだが「 R 」で表されていた。これは C がConfirmed だったのと同様に、R Received である。
それがのちに電話通信が行われるようになってこのRを口頭で表す必要性から、CがCharlieだったようにR Rogerという人名が(フォネティックコードがソレなので)当てられたということなのだ。知ってた?
つまり、Rogerの元意は人名ロジャーであり、そして徹底的に人名ロジャーの意味しかないのだな。
結局、RogerにせよCharlieにせよ、普通名詞→電信略符号→固有名詞 という道を辿って普通名詞化する道をたどったということで、これはひぜうに興味深い。無線通信発展史がウラ事情としてあるわけなんだな。
これを知ったのはつい最近で、実はまだ先月ぐらいのことだ。英語の辞書をぱらぱらめくっていて、んでもって、知った。昔の辞書にも載ってたんだろか。
しかしおれら日本人も器用なものよのぉ。相手がロジャーだと、
「ラージャー、ロジャー。」って言うもんなぁ。