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「JARLは公益法人か」という
検索ワードがヒットしているので、これについて簡単に書いておこうかと思います。
JARLは設立時より「社団法人」という肩書きをつけてきたと思いますが、これは民法上の「公益社団法人」という意味でありました。法的には公益法人としての扱いを受けてきていたと言えます。
では実質的に見て公益性は認められるかというと、これはなかなか難しいところがあって、戦争直後あたりは、公益性を認定されるには非常に厳しい審査が行われたらしい。ところがその反動なのか、昭和30年代には公益性の認定が非常に緩められた。JARLの法人化もこの昭和30年代に行われました。アマチュア無線の振興を通じて国民の科学心の育成に寄与するてなことを言えば、まぁ公共性は否定できないわけです。
ところがこの伝でいくと、そこらへんの八百屋であろうが魚屋であろうが、食生活の充実を通じて、国民の栄養を促進するなぁ~んちゃえば公益性はあるわけで、極端なことを言えば、そもそも公共性のない人間なんて世の中には一人もおらんわけです。
問題はどこらへんに線引きをするかという、もっぱら技術的なことがらなのですが、その昭和30年代の「線引き」によれば、JARLは(公益)社団法人とされることができた。
JARLはまだマシなほうだったかも知れませんが、公益法人の名の下に、私利私欲の充足を図ろうとしたヤツらがうじゃうじゃいたのはご存知のとおり。そこで2008年に法改正がなされ、現在の公益法人は、いっぺんきちっと整理しよやないけということになった。2013年までの移行期間中にこの整理は行われます。
さてそうすると、JARLの公益性はもういちど最初から議論される必要があるべきところ、この新法は公益法人の要件として従来の「学術、技芸、慈善、祭祀、宗教その他の公益に関する社団又は財団であり、営利を目的としないもの」のほかに
◎主たる目的とするこれらの公益目的事業の費用の比率を50%以上とし
ほかの要件を追加して設けた。いまざっとJARLの財務諸表に目を通してきましたが、ざっと目をとおしただけでもこの50%要件をクリアするのは、不可能。
したがって新法では、JARLは公益法人としての認定はされない、ということになります。選択の余地はありません。
これは非常にわかりやすい線引きの方法で、なにしろ総支出に占める公益目的支出の割合を算出すれば、その団体の「公益度」がわかるというものです。JARLの現在の公益度は八百屋・魚屋同様にゼロではないと思いますが、いずれにしても新法の要求を満たしません。
JARLは今後、公益社団法人ではなく、一般社団法人としての扱いを受けることになるのですが、実態が同好者のあつまり、という域を超えないのであれば、それで正しいのではないかと私は思います。今後JARLは、各地域クラブ・職域クラブの親玉的存在として存続することになると思われ、法的には、公益目的でアマチュア無線家を代表して発言する立場の組織はなくなります。
- Date : 2010-05-19 (Wed)
- Category : museum