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英語をしゃべってしょっ引かれた話
言うておくが、おれ自身のことではない。
だいぶ前のことなんだけど、どれぐらい前かというと、日本で最初のサミットが開かれたときの話だ。東京は厳戒態勢となって、ネコの子一匹霞が関近辺には寄れんという状況だった。なので地下鉄出口でゲロ吐いてるヨッパライとかは全部、全国から特別手当の支給を餌に寄り集められた警官によって駆除されつつあった。
そのときも、草剛がふりちんやった公園で、数人の警官が、ベンチで寝込む、風体のモロ怪しい浮浪者をなんとか起こして区域外へ追い出そうと難儀していた。
風呂にも何年も入っていなさそうに汚くて、酒臭い。無論、なにを言っても言を左右にして起き上がろうともしない。もうしょうがないから連行しようとしたそのときだ。
今度はさらに怪しい、トランクにオートバイを半分突っ込んで半開きの状態で、乗用車が公園を通り抜けようとしていた。乗っていたのは金髪外国人の二人組。停車を求めて事情を確かめようとしたものの、機関銃のような英語をしゃべって、田舎者の警官にはさっぱり対応のしようがない。
そこへ助け舟を出したのが、さっきまで酔っ払って寝込んでいたくだんの浮浪者。むっくと起きてきたかと思いきや見事な英語で通訳をこなし、外国人はただピクニックに行こうとしていただけだと判明、ことなきを得たかと思いきや、かえって余計怪しいということでソッコーで浮浪者は連行されましたとさという話。
あれから幾星霜。およそ四半世紀。今はもう、そこらへんのホームレスが突然、外国人旅行者に、その外国人よりキレイな英語で見事に道案内をしたとしても、別に驚くような時代ではぜんぜんない。あの時のように、新聞ネタにもならんであろう。
新聞ネタにはならんであろうが、タイーホはされるかもわからんので、皆の者、能ある鷹のワシらとしては爪を隠そうw。
なおここに登場した浮浪者はいったい何者だったかというと、ちょっと実態は悲しすぎて書けん。今風に、大手商社をリストラされてヤケクソになってた人間だぐらいに思っておいてくらはい。
ま、それでも悲しすぎるわなあ