謝り屋 というビジネスがあるのだという。文字通り、依頼を受けて謝りに行く。テレビでやっとった。
たとえば、若い営業マンが取引先で怒りを買ってしもうた。上司を連れてコイ と来たもんだ。かと言って、上司に「取引先が呼んでます」と言うわけにも行かず、前門の虎、後門の狼と相成る。
そんなときに、この謝り屋は、依頼を受けて取引先に謝りに行くというわけだ。で、若手営業マンを引き連れた格好で謝りに行った謝り屋は、向う先でとにかく謝り倒す。仕舞いには土下座をする。土下座をして、おデコに床の跡が付いたりすると効果的なのだとw。
報酬がどんなもんか興味深いところだが、テレビではなにも言うておらんかった。
ワシはこれを見て、実にいろいろなことが脳裏をよぎった。
いろいろ その1
テレビの謝り屋は、いかにも 上司 という風情だった。そらそーだろうが、しかし仮に、この謝り屋が「色香ほのめき立つ美女」だったらどうなるか。ナントカ京香とか、なんたら壇蜜とかだったら、どーなると思う?あるいは渡哲也とか鶴田浩二風だったら、あるいはさらに、須田慎一郎氏だったらどうか。須田さん、この人。
無線仲間のLIK・山内が、こいつは一人息子の坊ちゃんだったんだけど、そのおやじ様が そちら風 の風貌のひとで、しかも趣味が銃刀収集ときて、たまに遊びに行くとそのおやじさまが居間で にま~っとしながら日本刀をぽんぽんぽんと、あれはナニしとるのか知らんが、その日本刀を持ったままコッチを見て おうDBQ,久しぶり などと言ってくれたりしたもんだ。心優しいおやじ様だが、わしらはLIKんちのことを 山内組 と呼んでいた。
あるときLIKが近くでクルマの接触事故を起こし、その相手がヤー系だったらしく
ごるああ。お前の家はどこだ。
近くす。
親に話つけたろやないけ。連れてけ。
ええもうどうぞどうぞどぞどぞ。
となったものの、玄関先で挨拶だけしてそのヤー系は帰って行ったという。まぁそういうおやじ様だ。あのおやじ様が謝り屋やったら、どんなもんなんだろうなあ。
と、ふと考えたのでござった。
いろいろ その2
謝り方ってのがあるのを知ったのは、最近だ。近くの愛知県立高校へ じゃかましんだボケどもがぁあ と殴りこんだのが二度。それでよくわかった。
一度目は、女教師がゴタゴタ言いさらすもんだから怒鳴りつけ、責任者を呼べとやったら教頭の、奥村つったかなあ、ソレが出て来よった。
ところがところがコイツがハッキリせんやつで、言い訳ばっかりしやがる。こいつが一言しゃべるとおれの怒りが5倍ぐらいに膨れ上がる。
手前えバカヤロ、いっぺんおれんちの玄関先でおんどれの高校がどんだけ喧しいか体験しに来いと呼びつけ、ニョーボにはVTRを持たせ、あとでYouTubeにアップするから、撮っとけと言いつけ、準備万端でおれはその奥村を怒鳴りつけ出したんだが、ニョーボは一分もしないうちに消えてしもうた。
なんでちゃんと撮っとかんのだ、あとで見たかったのにと言うたら、あっあっあっあまりの剣幕でということで、あれだけ演技だと言うておいたのに、冗談の通じんやつだ凸。
で、この奥村では話にならんということで、ついに愛知県知事にまで「手前ぇ、どういう学校行政をやらかしとる」と話は発展して行ったのであった。
もう一度は、ここで野球の指導をしていた監督だ。日曜日だったので、この学校の者ではないと思う。この野郎が練習中に拡声器で生徒を怒鳴りつけておるわけだ。最初は我慢して草刈りをしていたが、ついにキレ、鎌をそこに置いて(なんで持っていかなかったのだと言ったヤツがいたが、置いて、だ凸(--メ、運動場の外側からフェンスによじ登り、ベンチでふんぞり返って拡声器持ってるその大男(いやあデカかった。元プロ選手かも知れん)の後ろから
ごるああああそこのお前っ! 近所迷惑なのがわからんのかあぁあ
と拡声器どころでない音声で怒鳴りつけてやったわけだが、次の瞬間、オレは負けていたのだなあ。
別に殴られたわけではない。
なんとこの大男、すくっと立ち上がって振り返り、直立不動の姿勢から、深々とおれにお辞儀し
まことにもうしわけありませんでしたっ!
つったわけ。潔いといえばこの上ない。うんもすんもない。怒られたらすぐに謝る。あなたがそこまでお怒りなのですから、私めに落ち度があったにちがいありません。理屈は抜きです。とにかく謝らせていただきます。私は落ち度の多い人間です。私に非があったにちがいないのです。
と思っていようがいまいが、相手にそう思っていると思わせるPresentationのスゴさよ。
こうなるとオレはもう、上げたコブシを下ろす場所がないわけ。
・・・ おう。
ぐらいしか言えまへんでした。完全に負けた。アッチの完勝だった。
わしは、この態度は見習わんといかんと思った。どうしてあそこまでカッコよく謝ることができるのか、よほど人生を通じて謝り倒して来たのか。なんであぁいうワザを身につけているのか。
わし思うに、あれはおそらく 体育会系のノリ というやつなのだろうと思う。先輩が右向けと言えば右を向く、先輩がごるあぁあと言えば即、すいませんと言う。そういう修練の積み重ねなのだろうと思うが、しかしこれは、相当の場数が要ることのような気がする。
相手が怒っている場合、ごたごた理由をさぐったり、非は本当に自分にあるのかなどと考えるより、つまり、ヘンなプライド持つより、とにかく謝っちゃったほうが、気持ちイイのは確かだし、なんというか、コミュニケーション上、話が早い。さて、では次にどうしたらよいか、改善策はナニかなどの検討に、早い段階から入れる。
おそらくはその過程で、本当の非がどちらにあったかが明確になってくるのであろう。
その時、怒った理由が不当なものであったとなると、怒った側は相当の負い目を持つことになる。ところが謝っちまったほうは、非が相手の側にあったとなれば、 貸し をひとつ作ることになる。この貸しはデカい。
てなわけで、わしはそれ以来、「 すいませんっ! 」とソッコーで謝れる人間になりたいと思い続けているのであ~る。
なおこのチームはワシの策略によって、以後二度とこのグラウンドに現れることができなくなっております凸。
上げたコブシは、やはり県の公物管理責任を問うところへ振り下ろしたわけだな凸。あれからもう10年ぐらいになる。