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カイちゃん、見上げてごらん、夜の星を II
カイちゃんは、滅茶苦茶に暑かった去年の夏が去った頃、急に老け込んだ。散歩の距離が日に日に短くなった。そしてそのうえ、歩く速度が毎日おそくなった。階段を一段ずつ降りるみたいに、毎日着実に老いを重ねた。
カイちゃんが眠っていると、鼻の前に手をかざして呼吸を確かめるのが日課になった。
カイちゃんは先週、その「老いの階段」を一気に転げ落ちた。月曜日に腰が砕け、火曜日に上半身も起こせなくなり、水曜日には固形物が食べられなくなった。木曜日は呼吸が荒くなり、流動物も嚥下できず、下痢症状を呈してどんどんと衰弱した。
かかりつけの医師の診立てでは、鼻腔部奥の、両目の間あたりの癌ではないかと。精密検査を受けるなら岐阜大農学部しか設備はないと。いずれにせよ手術等の治療は不可と。
金曜日・土曜日・日曜日は、もう、ただただカイちゃんを抱きしめていた。ミルクを浸したガーゼで唇を湿らせた。金曜日、スーちゃんが星になった。
一週間前のカイちゃん
- Date : 2011-04-26 (Tue)
- Category : 局免許